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1-(1)東京地方裁判所 令和7年(ワ)第4087号、同第13512号 管理組合理事会決議無効確認本訴、損害賠償反訴請求事件
ⅰ)裁判例結果詳細   ⅱ)判決全文   ⅲ)最高裁判例   ⅳ)A(区分所有者)の管理規約解釈

ⅰ)裁判例結果詳細

 事件番号  令和7年(ワ)第4087号、同第13512号
 事件名  管理組合理事会決議無効確認本訴、損害賠償反訴請求事件 
 裁判年月日  令和7年12月10日
 法廷名  東京地方裁判所 民事第12部法廷  
 裁判種別  判決 
 結果  本訴、反訴はいずれも棄却 
 判例集等
 巻・号・頁
 
 判示事項  本訴について、区分所有建物いわゆる分譲マンションの管理組合の第1回理事会が有効に成立する要件。
 反訴について、民事訴訟の提起が相手方に対する違法な行為となるか否かの判定。 
 裁判要旨 1本訴について
 区分所有建物いわゆる分譲マンションの管理組合の第1回理事会が有効に成立する要件。
ア総会において選任される予定の理事が事前に理事に就任することを承諾しているときは、同総会の終結の時に理事に就任する。
イ上記アで就任した理事は、次期の理事として理事会を構成する。
ウ上記アで就任した理事は第1回理事会を開催して、次期の理事長、副理事長、会計担当理事等を選任することができる。
エ上記ウ第1回理事会を招集する理事長が不存在であるが、次期理事候補者が事前に第1回理事会の開催について合意し参集するなどして第1回理事会を開催すれば足りる。
2反訴について
 民事訴訟の提起が相手方に対する違法な行為となるか否かの判定は、最高裁判所昭和63年1月26日判決(民集42巻1号1頁)に依ることが相当である。すなわち、民事訴訟の提起が相手方に対する違法な行為となるのは、提訴者が主張する権利又は法律関係が事実的、法律的根拠を欠くこと、かつ、提訴者がそのことを知りながら又は通常人であれば容易にそのことを知りえたのに、あえて訴えを提起したときに限られる。
 参照法条  マンション管理組合Bの管理規約
 憲法32条、最高裁判所昭和63年1月26日判決(民集42巻1号1頁)

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ⅱ)判決全文

令和7年12月10日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官
令和7年(ワ)第4087号、同第13512号 管理組合理事会決議無効確認本訴、損害賠償反訴請求事件
(口頭弁論終結日 令和7年10月15日)
判         決
東京都板橋区
 原告兼反訴被告 A(区分所有者)
東京都板橋区
 被告兼反訴原告 マンション管理組合B
 同代表者理事長 P1(令和7年理事長)
主         文
1 原告兼反訴被告の請求を棄却する。
2 被告兼反訴原告の請求を棄却する。
3 訴訟費用は、本訴反訴を通じてこれを21分し、その13を原告の、その余を被告の負担とする。
事 実 及 び 理 由
第1 請求
1 本訴
(1)被告理事会が令和5年〇月〇日理事会で決議した内容は全て無効であることを確認する。
(2)訴訟費用は被告の負担とする。
2 反訴
(1)反訴被告は、反訴原告に対し、85万8000円及びこれに対する令和7年3月25日から支払済みまで年3%の割合による金員を支払え。
(2)訴訟費用は反訴被告の負担とする。
(3)仮執行宣言
第2 事案の概要
 本訴は、区分所有建物である本件マンションの区分所有者である原告兼反訴被告(以下「原告」という。)が、本件マンションの管理組合である被告兼反訴原告(以下「被告」という。)に対し、令和5年〇月〇日開催の被告の理事会(以下「本件理事会」という。なお、本件理事会が被告の理事会として有効に存在するか否かは争いがある。)における各決議(以下「本件決議」という。)の無効確認を求める事案である。
 反訴は、被告が、本訴の提起は不当訴訟であると主張して、不法行為に基づく損害賠償請求として85万8000円の支払を求める事案である。
1 前提事実
(1)被告の令和5年役員の状況
 被告の令和5年の役員は、次のとおりであった。(甲4。役員の就任日については争いがある。)
 理事長 P2
 副理事長 P3
 会計担当理事 P4
 書記担当理事 P5
 監事 P6
(2)令和5年通常総会の状況
 被告において、令和5年〇月〇日午前10時15分から令和5年通常総会が開催され(以下「本件総会」という。)、令和6年の理事としてP6、P7、P8、P3の4名が選任された。(甲12・11頁)
(3)本件理事会の状況
 本件理事会は、総会に引き続き同日午後0時25分から開催された。本件理事会には、上記(2)により令和6年理事に選出された4名のうち、P6、P8、P3の3名が出席し、P6が議長を務めた。本件理事会は、令和6年理事の役職について次のとおり決定することを決議した(本件決議)。(争いがない)
 理事長 P6
 副理事長 P7
 会計担当理事 P8
 書記担当理事 P3
(4)管理規約の定め
 被告の管理規約(甲1。以下、単に「管理規約」という。)には、次の定めがある。
 (役員)
 第37条 管理組合に次の役員を置く。
   (1) 理事長
   (2) 副理事長
   (3) 会計担当理事
   (4) 書記担当理事
   (5) 理事(理事長、副理事長、会計担当理事、書記担当理事を含む。以下同じ。)
   (6) 監事
  2 理事および監事は組合員のうちから、総会で選任する。
  3 理事長、副理事著、会計担当理事および書記担当理事は、理事のうちから、理事会で選任する。
 (役員の任期)
 第38条 役員の任期は、原則として2年とする。ただし、再任を妨げない。
  2 補欠の役員の任期は、前任者の残任期間とする。
  3 任期の満了または辞任によって退任する役員は、後任の役員が就任するまでの間引き続きその職務を行う。
  4 役員が組合員でなくなった場合には、その役員がその地位を失う。
 (理事会)
 第53条 理事会は、理事をもって構成する。
  2 理事会は、次に掲げる職務を行う。
   (1)、(2) 略
   (3) 理事長、副理事長、会計担当理事および書記担当理事の選任
  3 理事会の議長は、理事長が務める。
 (招集)
 第54条 理事会は、理事長が招集する。
  2から4 略
 (理事会の会議および議事)
 第55条 理事会の会議は、理事の半数以上が出席しなければ開くことができず、その議事は出席理事の過半数で決する。
  2から4 略
2 原告の主張
(本訴について)

 管理規約38条3項は、役員は後任の役員が就任するまでの間引き続きその職を行うことを定めている。したがって、令和6年の理事らが本件決議によって役員に選任されるまでの間は、令和5年理事らが引き続きその職務を行わなければならず、本件理事会の招集、出席、議長は令和5年理事らによって行われなければならない。しかしながら、本件理事会は、令和5年の理事が1人も出席せず、令和6年の理事のみによって構成され、招集者でない者によって招集され、理事長に選任されていない者が議長を務めているから、管理規約38条3項、55条1項、54条1項、53条3項に違反している。よって、本件理事会を管理規約の定める被告の理事会と認めることはできず、本件決議は無効である。

 本件決議の無効が確認されれば、本訴状提出時の被告代表者の資格が無効となることなどからすれば、本件には確認の利益がある。
(反訴について)

 原告は、事実と本件管理規約の定めに基づき、憲法32条に基づく正当な権利の行使として本訴を提起したものであり、何ら不当訴訟に当たらない。

 被告の損害は争う。
3 被告の主張
(本訴について)

 令和6年の理事4名(P6、P7、P8及びP3)並びに監事1名PP5は、いずれも役員就任をあらかじめ内諾していたから、令和5年総会の終了時をもってそれぞれ理事及び監事に就任し、令和5年の役員らは、同時にそれぞれ理事及び監事を退任した。令和6年の理事及び監事は、令和5年総会の終了後参集し、本件理事会を開催した。よって、本件理事会の構成員、招集手続及び議事に何ら管理規約違反はなく、本件決議が無効とされるべき瑕疵は存在しない。

 確認の利益があることは争う。
(反訴について)

 原告は、これまでの訴訟の経緯などから、自己の主張が事実的、法律的根拠を欠くことを知り、または容易に知ることができたにもかかわらず、あえて本訴を提起したものであるから、本訴の提起は不当訴訟に該当する。したがって、原告は、民法709条に基づき、被告に生じた損害を賠償すべき責任を負う。

 被告に生じた損害は、次の合計額である85万8000円及び本訴係属の日からの遅延損害金である。
 ①本訴の弁護士費用として被告が負担する着手金、報奨金及び出廷日当 合計71万5000円
 ②反訴にかかる弁護士費用 14万3000円(上記①の20%)
第3 当裁判所の判断
1 本訴について
(1)
 原告は本件マンションの区分所有者であって、被告と管理会社との間の管理委託契約の有効性を争うところ、本件決議の無効を確認することは、これに起因する法律上の紛争を解決するために必要かつ相当と認められるから、本件訴えには確認の利益がある。
(2)
 管理規約によれば、被告の理事は総会において選任され(37条2項)、理事をもって構成される理事会の決議により、理事のうちから、理事長、副理事長、会計担当理事及び書記担当理事が選任されることとなる(53条1項、2項3号、37条3項)。これらの定めからすれば、管理規約は、総会において理事に選任された者らが、選任決議を経て理事に就任することを承諾した時(あらかじめ理事に就任することを承諾しているときは、総会の終結の時)に役員たる理事に就任し、もって理事会の構成員となること、理事会が、その構成員たる理事らの中から理事長、副理事長、会計担当理事及び書記担当理事を選任することを想定していることが明らかである。原告主張のように解すれば、任期を終えた前期の理事らによって当期の理事長、副理事長、会計担当理事及び書記担当理事が選任されるということになり、制度設計として不合理といわざるを得ず、これに反する原告の主張は採用することができない。
 このように解すると、理事会の招集が理事長の権限とされていること(管理規約54条1項)との関係で招集権者が存在しない期間が生じうることとなるが、理事(候補者)が事前に理事会の開催について合意し参集するなどの方法によって理事会を開催することが可能であり、実際に被告においてもそのような方法がとられている(弁論の全趣旨。被告第1準備書面14頁)というのであり、この点は上記結論を左右するものではない。
 したがって、本件理事会は、その構成員たる理事4名(P6、P7、P8、P3)のうちP7を除く3名が出席して開催され、P6を理事長として選任し、同人が議長を務めたものであり、その手続は何ら管理規約に反するところはなく、原告の請求はその前提を欠き理由がない。
2 反訴について
(1)
 後掲各証拠によれば、次の各事実が認められる。

 原告は、令和4年頃、被告の当時の副理事長(理事長の職務代行者)であったP9を被告として、原告が本件マンションの掲示板に掲示した張り紙がはがされて持ち去られたことに関し、同P9が権限を行使しなかった不作為につき不法行為に基づく損害賠償を求める訴えを提起したが、同年5月17日の口頭弁論期日において請求を放棄した。(乙7)

 原告は、令和5年頃、被告の当時の役員であったP2を被告として、①同P2が原告において本件マンションの掲示板に掲示した張り紙をはがして持ち去ったこと及び②同P2が総会の議長を務めることができないにもかかわらず勝手に総会の司会進行等を行ったことにより精神的苦痛を被ったと主張して、不法行為に基づく損害賠償を求める訴えを提起した。東京地裁は、同年9月27日、原告の請求を棄却する判決をした。また、東京高裁は、令和6年3月21日、原告の控訴を棄却するとともに、原告の追加請求を棄却する判決をし、最高裁は、同年11月20日、上告棄却及び上告不受理の決定をした。(乙8から10)

 原告は、令和5年頃、本マンションの区分所有者であるP10を被告として、①同P10が、原告を理事長から解任することの賛否を問うアンケートに対し「今後のA氏について理事になる資格を剥奪し」等と記載して原告を脅迫・侮辱したこと及び②同P10が、原告において本件マンションの掲示板に掲示した張り紙をはがして持ち去ったことにより精神的苦痛を被ったと主張して、不法行為に基づく損害賠償を求める訴えを提起した。東京地裁は、同年12月26日、原告の請求を棄却する判決をした。また、東京高裁は、令和6年7月17日、原告の控訴を棄却し、最高裁は、同年12月4日、上告棄却及び上告不受理の決定をした。(乙11から13)

 原告は、令和5年頃、本件の被告に対し、被告の複数の理事会決議の無効及び総会の不存在又は総会決議の無効確認を求める訴えを提起した。原告は、この訴訟において、被告の理事会においては理事が4名必要であるのに、3名の理事によって行われた理事会決議には瑕疵があること等を主張した。東京地裁は、令和6年8月22日、原告の請求を棄却する判決をした。また、東京高裁は、令和7年1月15日、原告の控訴を棄却するとともに、原告の追加請求を棄却する判決をし、この判決は確定した。(乙14から16)

 原告は、令和6年頃、本件総会において決議した議案(上記アからウまでの各訴訟における被告(P9、P2及びP10)にかかる弁護士費用を本件の被告が負担することを内容とする。)にかかる決議の無効確認を求める訴えを提起した。原告は、この訴訟において、上記イの事件の被告であるP2が本件総会時における被告の理事長であったことから、P2と被告との利益が相反する以上、P2が関与した本件総会の決議は無効であるなどと主張した。東京地裁は、同年11月25日、原告の請求を棄却する判決をした。(乙17)
 原告は控訴し、控訴審において、P2を被告の理事長に選任した令和4年〇月〇日の理事会の構成員は、同日の総会で選任された令和5年の理事らではなく、その前期にあたる令和4年の理事らであるとの主張を前提に、同日の理事会決議は理事会の定足数を満たさず無効であるとの主張を含む新たな主張を追加した。東京高裁は、令和7年6月18日、原告の控訴を棄却する判決をし、この判決は確定した。(乙27、28)
(2)
 民事訴訟の提起が相手方に対する違法な行為といえるのは、当該訴訟において提訴者の主張した権利又は法律関係が事実的、法律的根拠を欠くもであるうえ、提訴者が、そのことを知りながら又は通常人であれば容易にそのことを知りえたといえるのにあえて訴えを提起したなど、訴えの提起が裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くと認められるときに限られるものと解するのが相当である(最高裁昭和63年1月26日第三小法廷判決・民集42巻1号1頁参照)。
 原告の本訴における主張が根拠を欠くものであることは、上記1において判示したとおりである。他方、原告は、管理規約37条1項等の規定ぶりを根拠として本訴を提起したものであって、自身の主張が根拠を欠くことを知りながら訴えを提起したものとは認めがたい。また、認定事実のとおり、原告は、これまで被告又はその理事であった者らを被告として5件の訴訟を提起し、現時点でいずれも棄却判決が確定しているが、うち4件についてはいずれも本件と争点を異にしており、残る1件については、控訴審において本件と同様の管理規約の解釈に基づく主張を追加しているものの、本訴はこの主張に対する東京高裁の判決がなされるより前の令和7年2月19日に提起されている。そうすると、本訴の提起の時において、原告が自身の主張について根拠を欠くことを容易に知りえたとまではいえない。
 そうすると、被告及びその理事であった者らにおいて大きな応訴の負担が生じていることを考慮しても、本訴の提起が裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くとまではいえないから、被告の反訴請求は理由がない。
第4 結論
 よって、その余の点について判断するまでもなく、原告の本訴請求及び被告の反訴請求はいずれも理由がないから棄却することとして、主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第12部
裁判官 秋 山 沙 織 印


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 本件反訴、損害賠償反訴請求事件に関する最高裁判例を引用する。
 最高裁判所昭和63年1月26日第三小法廷判決(昭和60年(オ)第122号損害賠償請求事件、民集第42巻1号1頁)

 民事訴訟を提起した者が敗訴の確定判決を受けた場合において、右訴えの提起が相手方に対する違法な行為といえるのは、当該訴訟において提訴者の主張した権利又は法律関係(以下「権利等」という。)が事実的、法律的根拠を欠くものであるうえ、提訴者が、そのことを知りながら又は通常人であれば容易にそのことを知りえたといえるのにあえて訴えを提起したなど、訴えの提起が裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くと認められるときに限られるものと解するのが相当である。けだし、訴えを提起する際に、提訴者において、自己の主張しようとする権利等の事実的、法律的根拠につき、高度の調査、検討が要請されるものと解するならば、裁判制度の自由な利用が著しく阻害される結果となり妥当でないからである。

 下線は最高裁判所判例検索に掲載されている判決文の表記にしたがった。

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ⅳ)A(区分所有者)の管理規約解釈 

 原告兼反訴被告A(区分所有者)の本件管理規約解釈を、令和7年7月10日付原告準備書面(1)より抜粋する。

第2 原告の主張(令和7年7月10日付原告準備書面(1)48~52頁)
 事実と本件管理規約の規定に基づき、本件理事会の決議は無効である。
1 本件理事会に係わる原告の法律上の主張
 被告の役員は理事長、副理事長、会計担当理事、書記担当理事及び監事である(37条1項、第1、4(1))。被告の理事4名、監事1名は集会決議によって選任される(37条2項、第1、4(1))。被告の理事役員4名(理事長、副理事長、会計担当理事、書記担当理事)は第1回理事会で選任される(37条3項、53条2項3号)。任期の満了または辞任によって退任する被告役員は、後任の被告役員が就任するまでの間引き続きその職務を行なう(38条3項)。被告理事会は理事長が招集する(54条1項)。被告理事会の議長は理事長が務める(53条3項)。被告理事会の会議は理事の半数以上が出席しなければ開くことができず、その議事は出席理事の過半数で決する(55条1項)。
 被告の理事役員の就任、退任の厳密な時点はいずれも第1回理事会日の翌日午前0時00分である。被告の前期理事役員が退任する日は第1回理事会日である。次期理事役員が就任する日は第1回理事会日の翌日である。第1回理事会日の被告理事役員は前期理事役員4名であり、第1回理事会日翌日の被告理事役員は次期理事役員4名である。(第1、6(3))
 本件理事会の構成員は令和5年理事4名である。(第1、7)
2 本件理事会の決議無効
(1)招集者
ア 被告の事実上の主張
 令和6年理事が自発的に参集した。(被告第1準備書面14頁、カ)
イ 被告の法律上の主張
 第1回理事会招集時には未だ理事長が選任されていないため本件管理規約54条1項に基づき第1回理事会を招集する者はいない。(被告第1準備書面14頁、カ)
 ところで、被告は第1準備書面10頁(3)イにおいて、被告役員(理事長、副理事長、会計担当理事、書記担当理事及び監事)の就任、退任の厳密な時点はいずれも当該通常総会の終了時である、を主張する。被告の上記法律上の主張に従えば、本件理事会の招集者は令和5年通常総会終了時に理事長に就任した令和6年理事長P6である。然るに、被告は「第1回理事会招集時には未だ新理事長が選任されていない」をいう。被告の(1)招集者における法律上の主張と第1準備書面10頁(3)イにおける法律上の主張は完全に矛盾する。被告訴訟代理人弁護士の法律上の主張は破綻している。
ウ 本件管理規約違反
 本件管理規約54条1項に基づき、理事会は理事長が招集する。なお、本件管理規約54条3項に基づく本件理事会の招集はない。なぜならば、令和6年理事を選任した集会日と第1回理事会日が同一日である。
 然るに、本件理事会には招集者が存在しなかった(被告第1準備書面14頁、カ)。これは本件管理規約54条1項に違反する。
(2)議長
ア 被告の事実上の主張
 本件理事会の議長はP6である。(乙6、2頁、議長P6の署名押印)
イ 被告の法律上の主張
 被告役員(理事長、副理事長、会計担当理事、書記担当理事及び監事)の就任、退任の厳密な時点はいずれも当該通常総会の終了時である。(被告第1準備書面10頁、(3)イ)
 したがって、P6は令和5年通常総会終了時に令和6年理事長に就任した。よって、本件理事会の議長は令和6年理事長P6である。
ウ 本件管理規約違反
 本件管理規約53条3項に基づき、理事会の議長は理事長が務める。
 P6は令和5年通常総会決議によって令和6年理事に選任された(甲12・11頁、37条2項)。令和6年理事P6は上記総会後に実施された本件理事会の決議によって理事役員に選任される(訴状16頁~17頁、乙6、37条3項)。そうすると、本件理事会開始時、令和6年理事P6は未だ令和6年理事長の職に就いていなかった。
 したがって、本件理事会は理事長職に就いていない令和6年理事P6が議長を務めて議事を進行し、議案決議を行なった。これは本件管理規約53条3項に違反する。
(3)構成員
ア 被告の事実上の主張
 次の①ないし③より、本件理事会の構成員は令和6年理事4名である。
 ① 理事総数4名。(乙6、1頁)
 ② 本理事会は出席理事3名、欠席理事1名のため管理規約55条により有効に成立。(乙6、1頁)
 ③ 管理規約第55条に基づき、議長及び出席した理事2名が署名、捺印する。議長(令和6年理事長)P6印、出席理事(令和6年会計担当理事)P8印、出席理事(令和6年書記担当理事)P3印。(乙6、2頁)
イ 被告の法律上の主張
 被告役員の就任、退任の厳密な時点はいずれも当該通常総会の終了時である。(被告第1準備書面10頁、(3)イ)
 したがって、令和5年通常総会(10:15~12:21)終了時に、令和6年役員は就任した。他方、令和5年役員は同総会終了時に退任し、理事の地位を失った(被告第1準備書面12頁、(1))。よって、本件理事会(12:25~12:50)の構成員は令和6年理事4名である。
ウ 本件管理規約違反
 令和5年通常総会議案は令和6年の理事4名、監事1名を選任した(甲12・11頁、37条2項)。同総会は被告の理事役員(理事長、副理事長、会計担当理事、書記担当理事)を選任していない(37条3項)。令和6年理事役員は同総会終了後に実施された本件理事会の決議によって選任される(訴状16頁~17頁、乙6、37条3項)。したがって、本件理事会開始時、令和6年理事役員(理事長P6、副理事長P7、会計担当理事P8、書記担当理事P3)は未だ選任されず、その職に就いていなかった。
 本件管理規約38条3項に基づき、令和5年理事役員4名は令和6年理事役員4名が就任するまでその職務を行なう。すなわち、令和5年理事長P2は本件理事会を招集して、議長を務める(54条1項、53条3項)。令和5年理事役員4名は本件理事会に出席して、議案1、議案2を審議し議決権を行使する(55条1項)。よって、本件理事会の構成員は令和5年理事4名である。
 被告が主張する本件理事会構成員令和6年理事4名は本件管理規約37条2項、37条3項、38条3項、54条1項、53条3項、55条1項に違反する。
(4)総括
 本件理事会は本件管理規約54条1項に基づく招集者によって招集されなかった。本件理事会は本件管理規約53条3項が規定する議長が議長を務めなかった。被告が主張する本件理事会構成員令和6年理事4名は本件管理規約37条2項、37条3項、38条3項、54条1項、53条3項、55条1項に違反する。
 また、理事会の成立要件は「理事の半数以上が出席する」であるから、本件理事会の成立要件は「構成員令和5年理事4名のうち2人以上が出席する」である(55条1項)。本件理事会に出席した構成員たる理事は令和6年理事3名(理事長P6、会計担当理事P8、書記担当理事P3)である。上記令和6年理事3名のうちP3を令和5年副理事長とみなしても、令和5年理事の出席は1人である。したがって、本件理事会はその成立要件「構成員令和5年理事4名のうち2人以上が出席する」を満たさない。
 本件理事会は招集者、議長、構成員、成立要件がいずれも本件管理規約の規定に反する。よって、本件理事会を本件管理規約が規定する被告の理事会と認めることはできない。その決議を被告理事会の決議と認めることはできない。


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