ⅰ)裁判例結果詳細 ⅱ)判決全文 ⅲ)A(区分所有者)の管理規約解釈
ⅰ)裁判例結果詳細
| 事件番号 |
令和8年(ネ)第743号
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| 事件名 |
管理組合理事会決議無効確認(本訴)、損害賠償(反訴)請求控訴事件
(原審・東京地方裁判所令和7年(ワ)第4087号、同第13512号) |
| 裁判年月日 |
令和8年7月29日 |
| 法廷名 |
東京高等裁判所 第22民事部法廷 |
| 裁判種別 |
判決 |
| 結果 |
棄却 |
判例集等
巻・号・頁
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| 判示事項 |
民事訴訟の提起が相手方に対する違法な行為となるか否かの判定
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| 裁判要旨 |
民事訴訟の提起が相手方に対する違法な行為となるか否かの判定は、最高裁判所昭和63年1月26日判決(民集42巻1号1頁)に依る。すなわち、提訴者が主張する権利又は法律関係が事実的、法律的根拠を欠くうえ、提訴者がそのことを知りながら又は通常人であれば容易にそのことを知り得たといえるのに敢えて訴えを提起したときに限られる。
1 控訴人は、本件管理規約の規定ぶりから被控訴人が主張する解釈に至ることはあり得ない旨を主張する。しかし、被控訴人が主張する本件管理規約の解釈は、各規定の文言を局所的、限定的に解することによって導き出すことができる解釈である。したがって、被控訴人は事実的、法律的根拠を欠くことを知りながら又は通常人であれば容易にそのことを知り得たといえるのに敢えて訴えを提起したとまではいえない。ゆえに、本件本訴は不当訴訟ではない。
2 控訴人は、被控訴人が控訴人及び控訴人の役員であった組合員個人に対し、ごく短期間に訴訟提起、上訴提起を繰り返しその全てにおいて敗訴判決を受け、共同利益背反行為を反復継続している旨を主張する。しかし、被控訴人が提起した訴訟が全て敗訴であったことは、本件本訴が不当訴訟であることに結びつかない。また、被控訴人が過去に提起した訴訟及び本件本訴によって控訴人及びその組合員個人に応訴の負担が生じたこと(控訴人がいうところの共同利益背反行為)は、本件本訴が不当訴訟となる要因ではない。すなわち、訴訟提起によって相手方に応訴の負担が生じることは、同訴訟提起が不当訴訟となる要因ではない。本件本訴が不当訴訟であるか否かの判定は、最高裁判所昭和63年1月26日判決(民集42巻1号1頁)に依る。
3 控訴人は、本件訴訟が不当訴訟と認定されなければ、被控訴人は今後も新たな無効原因を主張して決議無効確認訴訟の提起を繰り返すことが見込まれるから、本件訴訟が不当訴訟であることは優に認められる旨を主張する。しかし、被控訴人が将来控訴人を被告として総会決議無効確認請求事件・理事会決議無効確認請求事件を提訴することは、憲法32条によって当然に保障される。被控訴人が将来控訴人の組合員個人を被告として損害賠償請求事件を提訴することは、憲法32条によって当然に保障される。さらに、上記2のとおり、控訴人又はその組合員個人に応訴の負担が生じることは、同民事訴訟が不当訴訟となる要因ではない。本件訴訟が不当訴訟であるか否かの判定は、最高裁判所昭和63年1月26日判決(民集42巻1号1頁)に依る。
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| 参照法条 |
マンション管理組合Bの管理規約
憲法32条、最高裁判所昭和63年1月26日判決(民集42巻1号1頁)
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令和8年7月29日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官
令和8年(ネ)第743号 管理組合理事会決議無効確認(本訴)、損害賠償(反訴)請求控訴事件
(原審・東京地方裁判所令和7年(ワ)第4087号、同第13512号)
口頭弁論終結の日 令和8年6月10日
判 決
東京都板橋区
控訴人 マンション管理組合B
同代表者理事長 P13(令和8年理事長)
同訴訟代理人弁護士 C
東京都板橋区
被控訴人 A(区分所有者)
主 文
1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は控訴人の負担とする。
事 実 及 び 理 由
第1 控訴の趣旨
1 原判決中控訴人敗訴部分を取り消す。
2 被控訴人は、控訴人に対し、85万8000円及びこれに対する令和7年3月25日から支払済みまで年3%の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要(以下、略語は、特に定めない限り、原判決の表記に従う。)
1 本件本訴は、区分所有建物である本件マンションの区分所有者である被控訴人が、本件マンションの管理組合である控訴人に対し、令和5年〇月〇日開催の控訴人の理事会(本件理事会)における各決議(本件決議)の無効確認を求める事案である。
本件反訴は、控訴人が、被控訴人に対し、本件本訴は不当訴訟に該当する旨主張して、不法行為に基づき、損害賠償金85万8000円及び遅延損害金の支払を求める事案である。
原審は、被控訴人の本訴請求及び控訴人の反訴請求をいずれも棄却したところ、控訴人がその敗訴部分を不服として控訴した。なお、当審において、被控訴人は、主位的に本件控訴の却下、予備的に本件控訴の棄却を求めている。
2 前提事実
原判決の「第2の1 前提事実」記載のとおりであるから、これを引用する。
3 争点及び争点に関する当事者の主張
原判決の「第2の2 原告の主張」及び「第2の3 被告の主張」記載のとおりであるから、これを引用する。なお、当審における控訴人及び被控訴人の補充主張の要旨は、後記第3の2及び3のとおりである。
第3 当裁判所の判断
1 当裁判所も、控訴人の請求及び被控訴人の請求はいずれも理由がないものと判断する。その理由は、後記2及び3のとおり当審における控訴人及び被控訴人の補充主張に対する判断を付加するほか、原判決の「第3 当裁判所の判断」記載のとおりであるから、これを引用する。
2 当審における控訴人の補充主張に対する判断
(1)控訴人は、本件管理規約37条1項のほか、同条2項及び3項、40条ないし43条、50条13号、53条2項3号の各規定も併せ読むならば、役員の種類が理事及び監事であり、理事の役職が理事長、副理事長、会計担当理事及び書記担当理事であることは明白であり、本件管理規約の規定ぶりから被控訴人が主張する解釈に至ることはあり得ないし、被控訴人が理事長のときの行動(令和4年の理事が選任された総会の後の第1回理事会で令和3年の役員を出席させていないこと)とも明らかに矛盾するから、本件訴訟は不当訴訟に該当する旨主張する。
この点、被控訴人が主張する本件管理規約38条3項、54条1項などの各規定についての解釈(引用に係る原判決第2の2(本訴について)ア参照)が、37条2項、同条3項などとの関係も勘案すれば合理性を欠くことは、引用に係る原判決の第3の1において説示するとおりであるが、被控訴人が主張する上記各規定の文言を局所的、限定的に解することによって導き出すことができないでもない解釈であり、また、総会の前に令和3年の理事らが出席して開催された理事会(甲17)において、再任又は新任となる役員候補者を予め確認し、被控訴人が「理事長」の肩書を付された令和4年の役員となることを承認する旨の議案を承認するという運用がされていたことをも併せて考慮すれば、被控訴人の上記主張は、事実的、法律的根拠を欠くことを知り又は通常人であれば容易にそのことを知り得たとまではいえず、本件本訴の提起が不当訴訟に該当するとまではいえない。
したがって、控訴人の上記主張を採用することはできない。
(2)控訴人は、被控訴人が控訴人及び控訴人の役員であった組合員個人に対し、ごく短期間に多数の訴訟提起、上訴提起を繰り返し、それら全てにおいて敗訴判決(請求放棄を含め、審級ごとに通算して11回連続敗訴)を受けるなど共同利益背反行為を反復継続していること、被控訴人の最終目的は令和5年〇月〇日から現在に至るまでの全ての総会決議、理事会決議を無効とすることにあり、本件訴訟が不当訴訟と認定されなければ、被控訴人は今後も新たな無効原因を主張して決議無効確認訴訟の提起を繰り返すことが見込まれること等の事情からすると、本件訴訟が不当訴訟であることは優に認められる旨主張する。
しかし、被控訴人が控訴人又はその理事であった者らを被告として訴えを提起し、現時点で棄却判決等が確定した5件のうち4件はいずれも本件本訴と争点を異にしている。また、残る1件については、控訴審において本件本訴におけるものと同様の管理規約の解釈に基づく主張を追加しているものの、本件本訴は、同主張に対する控訴審判決がなされる前の令和7年2月19日に提起されており、本件本訴を提起した時点において被控訴人が自身の主張について根拠を欠くことを容易に知り得たとまではいえないことは上記(1)のとおりである。そうすると、控訴人及びその理事であった者らにおいて、本件本訴を含めてこれまで複数回の応訴の負担が生じていることを考慮したとしても、本件本訴の提起についてみれば、裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くとまではいえないことは、引用に係る原判決第3の2において説示するとおりである。
したがって、控訴人の上記主張を採用することはできない。
3 当審における被控訴人の補充主張に対する判断
(1)被控訴人は、控訴人訴訟代理人が重過失により事件番号による特定を欠く本件控訴の控訴理由書を原審に提出し、当審に到達した時点では控訴提起後50日の提出期限を徒過していたことから、主位的に、控訴理由書は不存在となり本件控訴は却下すべきであり、予備的に、控訴人の控訴理由書等は時機に後れた攻撃防御方法として却下し、本件控訴を棄却すべきである旨主張する。
しかし、控訴人訴訟代理人は、控訴提起後、訴訟記録が原審にあり、当審に到着していなかったことから、書記官に確認した上で原審に控訴理由書を提出したものである(甲37、弁論の全趣旨)から、控訴理由書が提出期限を経過して提出されたとは認められないし、当審に記録が到着しておらず当審の事件番号が付されていない段階において、控訴人訴訟代理人が原審の事件番号により事件を特定したことに何ら問題は見いだせない。
したがって、被控訴人の上記主張を採用することはできない。
(2)被控訴人は、他に種々主張するが、当裁判所の前記1及び2の判断を左右するものとは認められない。
4 以上によれば、原判決は相当であって、本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし、主文のとおり判決する。
東京高等裁判所第22民事部
裁判長裁判官 谷 口 豊 印
裁判官 中 島 基 至 印
裁判官 中 辻 雄一朗 印
ⅲ)A(区分所有者)の管理規約解釈
被控訴人A(区分所有者)の本件管理規約解釈を、令和8年5月25日付被控訴人準備書面(4)より抜粋する。
(4)本件理事会の決議無効(令和8年5月25日付被控訴人準備書面(4)27~29頁)
本訴原告令和7年7月10日付準備書面(1)48~52頁、第2、2
事実に上記(1)条項を当てはめると、本件理事会の招集者、議長、構成員、議決が乙1管理規約に違反し、決議無効が導かれる。
本件理事会に出席した理事はP6(令和5年監事、令和6年理事長)、P8(令和6年会計担当理事)、P3(令和5年副理事長、令和6年書記担当理事)の3名であった(本訴訴状16~17頁、乙6・1頁、本訴原告令和7年7月10日付準備書面(1)12~13頁)。
本件理事会の招集者は令和6年理事長P6又は招集者不在(本訴被告令和7年5月20日付第1準備書面14頁、カ)であった。本件理事会開始時、令和6年理事長P6は理事長ではなかったので、理事会を招集する権限はない。招集者P6又は招集者不在はともに54条1項に違反する。
本件理事会の議長は令和6年理事長P6が務めた(本訴訴状16~17頁、乙6・2頁、議長P6の署名押印)。本件理事会開始時、令和6年理事長P6は理事長ではなかったので、理事会の議長を務める権限はない。議長P6は53条3項に違反する。
本件理事会開始時、本件管理組合の理事長は38条3項に基づき令和5年理事長P2であった。令和5年理事長P2は本件理事会の招集者、議長を務めなかったので、38条3項、54条1項、53条3項に違反した。
38条3項は「任期の満了または辞任によって退任する役員は、後任の役員が就任するまでの間引き続きその職務を行う。」を規定する。38条3項が規定する役員は「理事、監事」(種類)ではなく、「理事長、副理事長、会計担当理事、書記担当理事、監事」(職務者)である。理由は2つある。1つは「任期の満了又は辞任によって退任する役員」である。38条3項が規定する役員は、総会終了の後に理事・監事に就任した者ではなく、任期の満了または辞任の時点の役員であるから「理事長、副理事長、会計担当理事、書記担当理事、監事」である。2つは「その職務を行う」である。38条3項は「(前任の役員は)引き続きその職務を行う」として、役員を職務者に位置付けている。したがって、役員は種類「理事、監事」ではなく、職務者「理事長、副理事長、会計担当理事、書記担当理事、監事」を指す。
令和5年理事役員(理事長P2、副理事長P3、会計担当理事P4、書記担当理事P5)は、本件理事会で令和6年理事役員(理事長P6、副理事長P7、会計担当理事P8、書記担当理事P3)が選任されその後就任するまでの間、引き続きその職務を行なう。令和5年理事役員4名はそれぞれ本件理事会で職務(招集者、議長、議長補佐又は議長代理、会計事務引継ぎ、議事記録)を行なう。理事役員は理事の地位に在ることを前提としてその職務を行なう。したがって、令和5年理事役員4名は本件理事会の構成員である。本件管理組合の理事総数は4名であるから、本件理事会は令和5年理事役員4名によって構成される。然るに、本件理事会の出席理事のうち令和5年理事はP3、1名であった。よって、本件理事会は55条1項を満たさず、開催不成立である。本件理事会の決議は無効である。
本件理事会の決議無効要因は55条1項違反だけではない。54条1項に基づく招集がされなかったこと、53条3項に基づく議長が議事進行を務めなかったことも本件理事会の決議無効要因である。管理組合の集会が、規約が定める招集者によって招集されなかったとき、規約が定める議長が議事進行を行なわなかったとき又はその両方のとき、集会決議は無効である。同様に、管理組合理事会の招集、議長が規約に違反するとき、理事会決議は無効である。
なお、令和5年理事役員が本件理事会で令和6年理事役員を選任することは、公平・公正な令和6年理事役員選任、管理組合運営の継続性維持のために必要であり、乙1管理規約の制度設計にも合致する。当期の理事自身が理事役員を選任すると、己らの都合を優先し、適材適所の人材配置がされないおそれがある。最悪の場合は、くじ引き・ジャンケンで理事長を選出することもあり得る。現行の理事役員選任方法の課題、弊害は下記(5)のとおりである。
(5)現行の理事役員選任方法の課題、弊害(令和8年5月25日付被控訴人準備書面(4)29~30頁)
ア公平・公正な理事役員選任
現行の理事役員選任方法では適材適所の人材配置がされない。
令和3年理事自身が選任した令和3年理事長P9は令和3年総会前理事会議案1で「本日、役職決定を行う」、「以上の役職で決定した」を言い、令和4年の理事長被控訴人、副理事長P9、副理事長P11、副理事長P12、監事P2を選任決議し、同議案1を令和3年通常総会第11号議案として上程した(第1、2(3)ア)。
令和3年理事自身が選任した令和3年理事長P9は令和3年通常総会第11号議案で令和4年の理事長被控訴人、理事P9、理事P11、理事P12、監事P2を選任決議した(第1、2(3)イ)。
令和6年理事自身が選任した令和6年理事長P6は違法な第2号議案を令和6年第1回臨時総会に上程することを直前の理事会で決議した。令和6年理事長P6は令和6年第1回臨時総会で「横断歩道を赤信号で渡るのと同じで、(板橋区から)指摘されれば止めるが、指摘されなければ止めない」を言い、第2号議案を強行採決しようとした(第1、2(3)ウ)。
令和8年理事自身が選任した令和8年理事長P13は第1号議案、第2号議案、第3号議案を令和8年1回臨時総会に上程することを直前の理事会で決議した。第1号議案は工事見積書に疑義があり、第2号議案は違法であった。令和8年理事長P13は令和8年1回臨時総会で第1号議案を強行採決しようとした(第1、2(3)エ)。
イ管理組合運営の継続性維持
現行の理事役員選任方法では管理組合運営の継続性が維持されない。
令和6年理事長P6が令和6年第1回臨時総会に上程して強行採決しようとした第2号議案は「板橋区大規模建築物等指導要綱細則」16条駐車場(甲29)に違反していた。令和8年理事長P13が令和8年1回臨時総会に上程した第2号議案は「板橋区大規模建築物等指導要綱細則」17条自転車置場及びバイク置場(甲29)に違反していた。理事会で総会上程議案とすることを決議したこと、総会で議決しようとしたことは両者とも同じである。令和8年理事長P13は令和6年理事長P6と同じ過ちを繰り返した。
令和6年理事会から令和7年理事会を経て令和8年理事会へ情報伝達、課題伝達がされなかった。年度(期)が変われば、理事会の新たなメンバーが新規に最初から仕事を始め、以前の期と同じ過ちを繰り返す。